ライトノベル リリアとトレイズU レビュー

タイトル リリアとトレイズU
著者 時雨沢恵一
イラスト 黒星紅白
出版 電撃
発売日 2005年5月


執筆者:jade 評価:
アリソンの娘リリア・シュルツは幼なじみのトレイズと夏休みを利用して旅行に出かけた。
ひと夏の思い出になるはずだったこの旅は、たまたま乗った遊覧水上飛行で、湖に不時着している飛行機を助けようとしたことから暗転する。何と相手のパイロットから発砲されてリリア達が乗っている飛行機のパイロットが死んでしまったのだ!そして二人は理由もわからないまま、数機の飛行機に追われることになる。
彼らが知らずに巻き込まれた事件とは!?――─“そして二人は旅行に行った”完結編。

内容は「アリソン」3巻の配役を入れ替えただけといった感じ。アリソン読者なら事件の輪郭は上巻だけで何となく想像できるだけに、ストーリーを楽しむというよりもアリソンやヴィルといった前作のキャラたちが以前の経験を踏まえてどう動くのか、また彼らの子供たちは親と同じような状況でどのような行動を取るのかが物語の見所と言えるでしょう。

前作におけるストーク少佐の役どころであるトラヴァス少佐がどのように立ち回るのかに注目して読み進めたのですが、事件における彼の活躍はほとんど描かれておらず拍子抜け。しかも任務とはいえ、あのトラヴァス少佐がストーク少佐と同じ様な仕事を行っていたことがはっきり明記されたことには少なからずショックを受けましたね。秘密諜報部員という肩書きから容易に想像できることなんですが実際に眼前に示されると…ね。
それから真相を聞かされた時のトレイズの反応にも引っかかるものを感じましたね。トレイズの身分ならそういった国家の暗部に精通しているのはわかりますが、理屈ではわかっていても感情的な部分で反発してしまうのが若さと言うものでしょ?あそこで納得してしまうのは大人びているとか聡明とかいう言葉でくくるのは無理がありますよ。それに前作のヴィルの性格との差別化を図る意味でももっと年相応の青さを見せて食って掛かっても良かったような気がします。

上記のようにいくつか納得がいかない箇所はあったものの、それ以上に見ていて気持ちが良かった点も多数ありました。
その筆頭は、危機的状況においてトレイズがとった様々な行動を見たリリアが、彼に対して抱いてたわだかまりの正体に気付き、トレイズを一人の人間として見れるようになったことですね。恋愛面に発展しそうになかった二人の関係に変化が訪れたことによって、時雨沢氏特有の絶妙な距離感を保った恋愛描写が発揮されてきたのは嬉しい限り。この巻でもとあるアクシデントによってトレイズのことを異性として意識し始めるようになったリリアの描写も初々しくて可愛かったですしね♪

さすがに「アリソン」と比べると若干見劣りしますが、考えてみればまだシリーズ第1話。物語の導入部と言うことを考えると水準以上の出来には仕上がっていると言えますね。時雨沢氏の最大の魅力は恋愛描写と思っている私ですが、それが不足している今回の話でも十分楽しめました。
と言っても本編だけならせいぜい評価はB+といったところ。二本収録されてる短編のうちの1つ、アリソンのヴィルへの想いを綴った「遺書」の出来が非常に良かったので評価をAにしました。
次回以降の構想もあるとのことなので、リリアとトレイズの恋愛面は今後に期待。是非とも二人にはアリソンとヴィルに負けない魅力的なカップルに育ってほしいと思います。


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